「・・・みんな、またね。・・・良かったら、お見舞いに来てね」
レイが人なつこく言い、看護婦がシンジ達に軽く頭を下げ、移動ベッドを押して
その場から去っていった。
シンジは、複雑そうな表情のまま、レイを見送った。
第六話「日常の楽しさ 前編」
シュウジ
あれから一週間がたった。
あのあとキョウ達はキョウが運転する車に乗り込み住む場所に移動した。
場所は第壱中学校とネルフ本部に行く道の中間地点だった。
ここは元々ネルフ本部の人達が使う場所だったが本部に住む人も多く、すっかりあいていたマンションだ。
ミサトが使っているマンションでも良かったが、
それだとたかりに来る可能性が大きいのでというシンイチの案でここになった。
部屋は案外狭くムカついたキョウが壁に穴を開け隣の家とドッキングにしてしまった。
そのおかげで部屋は案外広くなり結果オーライということになった。
シンジは結構気にしていたが・・・
ちなみにシンイチは以前なら驚いていたがもう慣れたという感じで驚かなかった。
そのあとユイが引越しするから一緒に住まないかという電話があったがシンジは電話にも出ようとはせず
このままという結論が出た。
そして今日は第壱中学校に転校する日だ。
トントントントン
「♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜」
リズミカルな音をたてながら料理を作っているのはキョウだ。
料理は当番制にしようというシンイチのアイディアで今日の朝はキョウが当番というわけだ。
今日から学校なので三人分のお弁当も作っている。
キョウは壱中の制服の上に自前のエプロンをかけ和風の朝食を作っている。
その姿はお兄ちゃんの制服を着て楽しく料理をしている女の子にしか見えない。
「うん♪これで完了〜〜♪」
お味噌汁も出来上がってそろそろ寝ている二人を起こしにいかなればならない。
コンコン
「シンイチ〜ご飯できたよ〜〜」
ガチャ
「ほら、起きろ、シンイチ。朝だぞ。」
「う〜〜ん、わかった」
「顔洗って、シンジも起こしてきてよ。」
「うん。」
「「「いただっきま〜す」」」
シンジも起きて3人で朝食を食べる。
今日の朝食は豆腐と油揚げのお味噌汁に焼いた鮭、それにあったかいご飯に白菜の漬物という日本の朝ご飯って感じがするものだ。
「うん、おいしいよキョウ。」
「うん、おいしい。」
「ありがとう。シンジ、シンイチ。」
そんな新婚夫婦が言いそうなことを言い合っているうちに朝ご飯は終わった。
「「ご馳走様。」」
「じゃあ制服に着替えておいで。」
キョウが後片付けをしている間にシンジとシンイチが制服に着替えて
お弁当を持ち学校に行く。
「シンイチとシンジの区別がつかないんじゃないんじゃない学校の人?」
というキョウの言葉からシンイチが鉢巻をするということで解決した。
「「「いってきま〜す。」」」
家には誰もいないがそれは気持ちの問題だ。
第壱中職員室の前には人だかりが出来ていた。
「すみません、今日転校してきた碇と神楽ですが……」
シンイチが教師達に声をかける。
すると、一人の男性教員が近づいてきた
「ああ、君達がそうか、君がシンジ君?」
「いえ、鉢巻している僕が神楽シンイチです。」
「そして俺がその兄、神楽キョウで〜〜す。」
「シ、シンジ君とシンイチ君はそっくりだね。」
教師が少し混乱したように言う。
「まぁ、世界には三人同じ顔の人がいるっていうから。」
キョウが楽しそうに言う。
「そうだね。」
教師はすぐ納得する。
「(うーーーん、この人・・・・できる・・・・)」
シンイチは何ができるのかわからないがそんなことを考えていた。
「それにシンジ君だね?」
「は、はい、そうです。」
「すまないが、HRが始まるまでここで待っていてくれ、もう少しで始まるから」
シンイチ達を応接室に案内する。
「わかりました」
「おっと、自己紹介を忘れる所だったな、俺は2-A担任の浅倉コウスケだ、これからよろしくな」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「どうも〜」
そしてコウスケは部屋から出ていった。
第壱中の2−Aの教室は、登校してきた生徒達のざわめきに包まれていた。
「・・・ねぇ、相田君」
そばかすでお下げの少女が、眼鏡の少年に声をかける。
「ん?なんだい、委員長?」
相田と呼ばれた眼鏡の少年が、眼鏡を指で押し上げて訪ねた。
「・・・今日、転校生が来るんだよね?」
「ああ、そうだな。男だって話だけど・・・」
「そう・・・と、ところで、鈴原、最近ずっと休んでるけど、どうしたのかな?」
少し顔を赤くして言う少女。
眼鏡の少年はこのお下げの少女、洞木ヒカリが、自分の親友に特別な感情を持って
いることに気付いていた。
「・・・さあね。この間のロボット事件で、大けがでもしたかな?」
「えっ!?で、でも、テレビじゃ一人も居なかったって・・・」
「まさか。鷹巣山の爆心地見たろ?入間や小松の部隊だけじゃなくて、三沢や九州の
部隊まで出動してんだよ?絶対、十人や二十人じゃすまないよ。死人だって出てるかも
知れないじゃないか」
二人が喋っていると、勢い良く教室の扉が開き、ジャージ姿の少年が入ってきた。
「鈴原・・・」
「よう、トウジ」
二人は、ジャージ姿の少年、鈴原トウジに声をかけた。
「なんや。ずいぶんと減ったみたいやな?」
ジャージの少年は二人に歩み寄りながらそう言った。
「疎開だよ、疎開。みんな転校しちゃったよ。街中であれだけ派手に戦争されちゃぁね」
「喜んどるのはお前だけやろな、ケンスケ。生でドンパチ見られるよってに」
そう言われた眼鏡の少年、相田ケンスケは、トウジにビデオカメラを向けながら、
冗談半分で訪ねた。
「まぁね・・・トウジはどうしてたの?こんなに休んじゃってさ。この間の騒ぎで、
巻き添えでも食ったの?」
「妹の奴がな、ちょっと怪我してもうたん。」
「え、それでナツミちゃん大丈夫なのか!?」
ケンスケはナツミに面識があるので心配して聞いた。
「いや、全然たいしたことないんや。足に怪我しただけだし、昨日もう退院したんや。」
「ふう、びっくりさせんなよ。」
がらがらがらっ。
その時、扉が開き、担任である教師コウスケが入ってきた。
委員長であるヒカリが、気を取り直して慌てて号令した。
「起立!礼!着席!」
「え〜、本日は転校生を紹介するぞ。」
コウスケが生徒に言う。
「じゃあ、入ってきなさい。」
シンイチ達が呼ばれて教室に入る。
「「「「「きゃぁぁ〜〜〜!!!」」」」」
女子からは歓喜の悲鳴が、
「「「「「チッ!!!!」」」」」
男子からは強烈な殺気120%出していた。
担任のコウスケは
「(ははは・・・しょうがないか)」
と思いながらも黒板にシンイチ達の名前を書いていく。
黒板に大きく『碇シンジ』『神楽シンイチ』『神楽キョウ』と書かれた。
「え〜と、転校生達だ。みんな仲良くしてやれ。じゃあ、自己紹介を。」
「はい。今回転校してきた碇シンジです。みなさん、よろしくお願いします」
シンジは緊張しながらも微笑みながら言う。
昨日キョウに
「自己紹介の時は明るく元気よく!!!」
などと散々言われたので頑張ってやってみたというわけだ。
その後シンイチとキョウも微笑みながら自己紹介した。
もちろんこの時、女子の大半がこの笑みの虜になり、男子は無言の圧力をシンジ達に向けたとこを言うまでもない。
ちなみに、この時男子のメガネマンは、
「(売れるぞ〜!!)」
と心の中で叫んだが、それはまた別の話である。
「じゃあ、碇の席は洞木の隣の席に座って、神楽兄弟はその後ろだ。」
「は、はい。」
「はい。」
「はーい。」
ちなみに最初がシンジ、次にシンイチ、最後にキョウだ。
返事一つで性格がわかる。
コウスケに言われ、シンジは少し俯きながら指定された席に向かった。
「・・・このクラスの委員長を務めている洞木ヒカリよ。よろしくね、碇シンジ君、神楽キョウ君、神楽シンイチ君」
ヒカリは委員長として、微笑んで挨拶をした。
「う、うん。よろしく・・・」
まだ緊張しているのか、シンジはぎこちない笑みを浮かべて応えた。
「「よろしく〜」」
シンイチ達は声をそろえてヒカリに答えた。
「洞木、碇達が慣れるまで、色々と教えてあげてくれ。」
コウスケはそう言って教室を出ていった。
「・・・ねぇねぇ、碇君達ってどこからきたの?」
早速、何人かの女子生徒達がシンジの席に来た。
「あ、あの・・・第二新東京からだけど・・・」
「あー、俺達はアメリカから。」
「そうなんだ。ご両親の仕事の都合か何かなの?」
別の女子生徒に尋ねられる。
「う、うん」
シンジが戸惑いながら応える。
「まー、そんな感じ?だよなシンイチ?」
「うん。そうだよ。」
キョウ達も無難に答える。
「そう。それじゃ、ご両親と暮らしてるのね?」
「・・・ううん・・・何か・・・用事があるって・・・」
「えっ!?」
「それじゃ、一人暮らしなの?」
その言葉を聞いて、女子生徒達の頭に、とある一定の思考が浮かぶ。
「(・・・それじゃ、食事とかどうしてるの?)」
「(・・・今度、ご飯作りに行ってあげようか?)」
勝手な想像をしている女子生徒達に、シンジの言葉が届いた。
「ううん、ちがうよ。シンイチとキョウの三人暮らし。」
女子生徒達が心の中でガッツポーズしたのは言うまでもない。
そんな会話をしているとチャイムが鳴り、女子生徒達は自分の席に戻っていった。
朝に職員室で渡された教科書を取り出して、授業を受けているシンジの席の
コンピューターに、個人用チャット回線が開いた事を知らせるメッセージが出た。
「・・・?」
シンジがチャット画面を開くと、メッセージが届いていた。
『碇君って、あのロボットのパイロットってホント? Y/N』
不思議そうな表情をして教室内を見回すシンジの目に、教室の後ろの方で小さく手を
振る二人の女子生徒が見えた。
『ホントなんでしょ? Y/N』
再びメッセージが届いた。
この時間の授業の老教師は、セカンドインパクトについてひとくさり述べているが、もちろん、
一般世間で知られている通りの『表向きの発表』と言う奴だ。
シンジは少し考えた。
(僕、パイロットじゃないんだけど・・・・)
N・Oと打ち込み、Enterキーを押した。
しかし
『うそ。わかってるんだから。』
と返ってきた。
しかしシンジは本当にパイロットではない。
サードチルドレンといっているのもネルフが勝手に言っていることであって承諾はしていない。
どうしたらいいか分からず後ろにいるキョウに助けを求める。
しかしキョウは
「別に本当のこといっていいんじゃない?」
という守秘義務という文字を忘れているんじゃないのか?と思う言葉が返ってきた。
別にキョウは守秘義務を知らないわけじゃない。
しかしここまで知ってしまったらしゃべっても同じだと思い許可を出したのだ。
「(それにしても保安部はざるだな。ま、所詮ネルフも国連といっても技術者から成り立っている組織だからな、
これくらいのことはわかっていたし。保安部の連中は二流か三流って所だろう。掃除をしてから鍛えるか。)」
キョウがそんなことを考えていると、とたんに教室中の生徒達が立ち上がって歓声を上げた。
シンジがシンイチのことを言ったのだろうがどうやらそれが秘守モードではなかったようだ。
老教師は、自分の世界にトリップしている。
「すっげー!」
「素敵ぃ!」
「格好いい!」
皆がシンイチの周りに集まって思い思いに喋っている。
キョウは考えているうちに眠くなり、もうすっかり夢の中で昨日テレビで見たアンOンマンと戦っている。
シンジは、驚いて言葉も出ない。
「・・・ちょっと!授業中じゃない!」
委員長洞木ヒカリが立ち上がり、注意するが、誰も聞いちゃいない。
「いいじゃんいいじゃん。なぁ、神楽。あのロボット、何て言うんだ?」
「エヴァっていうんだ。」
「武器は?必殺技はぁ?」
「武器は色々あるよ。必殺技なんてもんはないよ。」
シンイチが無難に答えてるとそのたびに歓声があがる。
そんなシンイチを、トウジは黙って見つめていた。
後書きのようなもの
う〜ん、進まない、と考えているシュウジです。
日常をかければいいな〜と思っていたんですけどうまくかけません。
オリキャラ浅倉コウスケ登場!!もちろん老教師もいますが(苦笑)
結構この人も活躍すると私は思っています、たぶん・・・・
もし良かったら感想などよろしくお願いします。